万年筆のインクが出ない時の対処方法
記事公開日:2024年9月4日
万年筆を使っていると、突然インクが出なくなることがあります。原因はさまざまでその対処方法も異なります。
この記事では、万年筆のインクが出ない時の一般的な原因とその解決方法を紹介します。
インクが出ない時の対処方法
さっそくですが原因と対処方法を見ていきます。
ドライアップしている
「ドライアップしている」つまり「ペン先が完全に乾燥している状態」です。
万年筆をしばらく使わずに放置しておくと、ペン先に残ったインクが乾燥して固まってしまうことがあります。この場合、以下の手順で解決できます。
ぬるま湯で洗う
ペン先をぬるま湯につけ、インクが溶け出すのを待ちます。温水がインクを柔らかくし、固まったインクを取り除くのに効果的です。
熱いお湯はダメです(40℃程度推奨)
以前、そこまで熱いと思っていなかったのですが、古い万年筆をお湯で洗浄したところ、まったく書けなくなってしまったことがあります。
熱くてもお風呂のお湯程度(40℃程度)にしておいた方が安全です。
洗浄キットを使用して洗浄する
市販の洗浄キットを使って、インクが乾燥したペン先を洗浄します。洗浄キットを使うことにより効果的に洗浄ができます。洗浄液を使用してつけ置きすればほとんどの場合、キレイになります。
メーカーごとにカートリッジの形が違うので、合わせて準備する必要があります。
洗浄の詳しい解説は別の記事でありますのでこちらをご覧ください。
- 洗浄キットはこちら
-
洗浄キットはこちらです。
パイロット 洗浄キット
※ : 洗浄液がついています
セーラー万年筆 洗浄キット
※ : 洗浄液はついていません
プラチナ万年筆 洗浄キット
※ : 洗浄液がついています
プラチナ万年筆 洗浄キット(欧州規格用)
※ : 洗浄液がついています
私はプラチナ万年筆の洗浄液を小瓶に入れ、何回かにわけて使用しています。1パックを1度に使うほどでもないと思っているのでそうしています。いままで特に問題(洗浄力が落ちる等)は発生していません。
ペン先が乾燥しにくい機能を搭載している万年筆も各社より発売されていますので購入を検討してみるのもいいかもしれません。
ペン先やペン芯にゴミが詰まっている
長期にわたり万年筆を使っていると、ペン先やペン芯にインクのカスや紙の繊維が詰まることがあります。この場合は洗浄するのが一番です。
こちらもドライアップ時と同様にペン先を洗浄するのが効果的です。
ペン先の洗浄
ペン先を水で洗います。それでも解消されない場合は市販の洗浄キットを使って、ペン先全体を洗浄します。
メーカーごとにカートリッジの形が違うので、合わせて購入する必要があります。
洗浄の詳しい解説は別の記事でありますのでこちらをご覧ください。
それでも出てこない場合
万年筆の構造に精通している場合は、ペン芯まで分解しての洗浄があります。しかし、万年筆が壊れる可能性もありますのでメーカーに修理をお願いするか、専門店に依頼するのが間違いありません。
私はお願いしたことはないのですが評判が良いようなので検討してみてはいかがでしょうか。
公式サイト:https://maestrito-repair.com/
X(旧ツイッター):https://x.com/maestrito_pen
インクがペン先まできていない
ペン先までインクがきていない原因として次のものがあります。
空気が入ってしまっている場合
カートリッジ、コンバーターに空気が入ってしまい、表面張力の影響でペン先までインクがペン先までこない時があります。そのような時はペン先をティッシュペーパー等でインクが漏れないように包んだ状態で軽くカートリッジまたはコンバーターをトントンと軽く叩いてあげるとインクが下りてきます。
コンバータ式、吸入式の場合、スクリューを反時計回りに回してインクを移動させる方法もあります。
はじめて使う場合
カートリッジではじめて使う場合、インクがなかなか出てこない時があります。
10分から15分程度待てばたいていの場合筆記できますが、それでもインクが出てこない時はペン先を少し水にぬらすと筆記できるようになることもあります(呼び水といいます)。
万年筆とインクの相性が悪い
特に顔料系インクは万年筆の詰まりの原因になりやすいです。水性の染料系だとしても万年筆と相性の良いインクとそうでないインクがあります。
まったくインクが出てこないまで相性が悪い組み合わせは、そうそうあるものではありませんが、インクの出が悪くなる組み合わせがあるのも事実です。
別のインクに変更してみると、驚くほどに筆記できることがあります。使用しているインクの可能性もあるので、他のインクを試してみてください。
これまで1本だけどうしても特定のインクを入れると全く書くことができない万年筆がありました。そのインクを使うことをはあきらめ、別のインクで使うことにしました。
ペン先の筆記角度や筆圧が合っていない
書くときの角度や筆圧が影響している場合もあります。万年筆を使い慣れていない人や、長い間万年筆を使っていない人はこの問題の可能性があります。
筆記角度が正しくない
上の画像は筆記角度が正しくない例です。紙に対してハート穴が上に来る位置が正しいです。
① ペン先がネジれている(右にねじれている)
② ペン先がネジれている(左にねじれている)
③ 立てすぎている
④ ちょうどよい
万年筆は特定の角度で書くことで最もスムーズにインクが出ます。ペンを水平に持ちすぎたり、立てすぎたりしないように注意しましょう。万年筆を立てる角度はおおよそ45°がいいです。ボールペンのように立てて書くとインクかすれが発生しやすくなるので気を付けましょう。
初心者の方で筆記角が原因の場合、筆記角度を正しいものにしてくれる万年筆も発売されているので検討してみてもいいかもしれません。
- 筆記角度を正しくするために
-
超有名な万年筆ですがグリップが三角形になっており、正しい角度で握ることができる設計です。
こちらはおもしろい万年筆で筆記角度を万年筆が合わせてくれる(ペン先の角度が調整可能)万年筆です。
筆圧が合っていない
万年筆は軽い筆圧で書くことが推奨されます。強い力で書くとインクの流れが悪くなることがあります。
万年筆の魅力の一つに「筆圧が不要」(ほとんどいらない)という点があります。ほとんどの万年筆が筆圧が50gもいらずに筆記可能です。
下記の条件でシャープペンの芯(芯径0.5mm)が折れる筆圧がおよそ450g~500gです。
■ 日本メーカー製 HB
■ 2mm出した状態
■ シャープペンを45度に傾けて筆記
さらに
下記の条件でシャープペンの芯が折れる筆圧がおよそ200g~250gです。
■ 日本メーカー製 HB
■ 3mm出した状態
■ シャープペンを45度に傾けて筆記
インクがない
最もシンプルな原因としてインクが少なくなっている可能性があります。対応もシンプルですね。インクを補充してください。
「そんなこと?」と思われるかもしれませんが、私は結構あります、インク切れ…。
まとめ【万年筆のインクが出ない時の対処方法】
インクが出ない一般的な原因とその解決方法を解説してきました。
- ドライアップしている
- ペン先やペン芯にゴミが詰まっている
- インクがペン先まで降りてきていない
- 万年筆とインクの相性が悪い
- ペン先の筆記角度や筆圧が合っていない
- インクがない
万年筆のインクが出ない場合は、焦らずに原因を見極めて適切な対処を行うことが大切です。正しいメンテナンスを行うことで、長く快適に万年筆を使用できるようになります。
これらの対処法を実践して、お気に入りの万年筆で万年筆ライフを楽しみましょう。
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