万年筆

万年筆メーカーの公開情報を読んでみた|値上げ・限定品・入門モデルから考える今

紙とペンのブログ管理者
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万年筆の価格を見て「以前より手が届きにくくなったな」と感じることはありませんか。

限定品に心が動く一方で、いつか買おうと思っていた定番モデルの価格も気になります。

そこで浮かぶのが「価格が上がった分、メーカーの利益も増えているのだろうか?」という疑問です。

パイロットとセーラー万年筆の公開情報を読むと、売上が増えても利益が減る場合があり、反対に売上が減っても利益が改善する場合があることがわかります。

万年筆の世界は、価格や新製品の話題だけでは見えてこない事情があるようです。

今回は、パイロットとセーラー万年筆2社の決算資料に書かれたメーカーの事情と、プラチナ万年筆の入門モデルを手がかりに、万年筆の今を考えてみます。

管理者のボヤキ…

万年筆に限った話ではありませんが、メーカー(販売店等)は商品を売らなければ存続できません。

とはいえ「○○限定」と銘打った商品が次々に出てくることに、少々疲れ気味です。

「万年筆は長く使って自分好みに育てていくのが醍醐味」と言いながら「○○限定」、「□□限定」と新商品が次から次へと世に出されることに「どういうこと?」と思ってしまう自分もいます。

値上げが続き、以前のように新しいものを買えなくなった悔しさが、そんな考え方を生んでいるのかもしれません…。

今回読んだ資料とわかることの範囲

最初に、3社では確認できる情報が異なることをお伝えしておきます。

パイロットとセーラー万年筆については、主に2025年12月期の業績説明を参照しました。

プラチナ万年筆は、公式の公開情報では 売上・利益の推移を確認できなかったため、業績比較の対象には含めていません。

そのため、プラチナ万年筆は、最近の商品情報から入門モデルの選択肢について見ていきます。

メーカーこの記事で参照する情報
パイロット2025年12月期の営業概況。万年筆の販売状況は2026年中間期の説明も補足
セーラー万年筆2025年12月期の決算短信。主に文具事業の業績と販売状況
プラチナ万年筆公式の商品情報。売上・利益の比較は行わない

また、会社全体の売上と、万年筆だけの売上は別です。この記事は3社の業績ランキングや、万年筆の利用者数を推計する記事ではありません。

この記事は、2026年9月時点で確認できた公開情報をもとにしています。

万年筆が高くなったらメーカーも儲かる?

買う側にとって、値上げは支払う金額が増えることです。

しかし、作る側(売る側)は、昨今のニュース等の情報からもわかるように、材料費や人件費などが大幅に上昇しているので、価格が上がるのは致し方ない部分もあると思います。
だとしても「上がり過ぎ…」と思っているのが正直なところです。


売上は、商品などを販売して得た金額。そこから売上原価や販売・管理にかかる費用を差し引いたものが営業利益です。

売上が増えていても、費用がそれ以上に増えれば、営業利益は減ります。

パイロットは2025年に増収でも営業減益

実際にパイロットの2025年12月期を見ると、連結売上高は前期比0.2%増だった一方、営業利益は6.5%減でした。

営業利益自体は約166億円の黒字ですが、売上と利益は同じ方向には動いていません。

同社の地域別説明では、日本で労務費や減価償却費などが増え、欧州でも原価や労務費などの増加が利益を押し下げたとされています。

出典:パイロット「営業概況・2025年12月期(通期)」


ただし、これは万年筆以外の製品も含むグループ全体の結果です。

「万年筆の値上げで儲かった」、「万年筆が売れなくなった」といった原因までは、この数字から判断できません。

ここでわかるのは、メーカーの状況を知るには、売上と利益をセットで見る必要があるということです。

買い手が感じる価格の高さと、メーカーに残る利益の大きさは、同じ話ではありません。

パイロットの万年筆そのものはどうなのか

会社全体の数字だけでは判断できないとしても、万年筆好きなら、やはり万年筆の売れ行きが気になります。

そこで時期を進めて、2026年1〜6月を対象とするパイロットの営業概況を見ると、日本セグメントの国内販売について、「カスタム」シリーズなどの万年筆も堅調に販売された と説明されています。

出典:パイロット「営業概況・2026年12月期(中間期)」日本セグメント


これは、万年筆に直接触れた情報です。少なくとも、この期間のパイロットの説明からは、国内の万年筆販売が一律に落ち込んでいるとは読めません。

ただし、ここで紹介されているのは販売状況であり、購入した人の人数ではありません。

同じ万年筆でも、メーカーや製品、時期によって動きは違います。

「万年筆業界は好調」、「もう使う人はいない」と、ひとまとめにしてしまうと、こうした違いが見えなくなってしまいます。

はじめての万年筆ならコレです。

ライティブ(LIGHTIVE)|レビュー(パイロット|万年筆)
ライティブ(LIGHTIVE)|レビュー(パイロット|万年筆)

パイロットの金ペンでおすすめするならこれです。

カスタムヘリテイジ91|レビュー(パイロット|万年筆)
カスタムヘリテイジ91|レビュー(パイロット|万年筆)

セーラーは限定品が好調でも定番品は苦戦

万年筆好きとして、もう少し商品に近いところまで読めるのが、セーラーの文具事業の説明です。

2025年12月期の決算短信によると、国内では定番の金ペン万年筆の販売が伸び悩む一方、高価格帯の限定製品は好調でした。

また、文具事業の売上は前期比1.6%減でしたが、事業の利益は前年の赤字から黒字に転換しています。

金などの材料費が上がるなか、費用の削減と高価格帯製品の販売に力を入れたことが改善につながったと説明されています。

なお、ロボット機器事業も含めた会社全体では営業赤字でした。

出典:セーラー万年筆「2025年12月期 決算短信」添付資料2ページ(PDFの4ページ目)


売上は少し減っているのに、文具事業の利益は改善している。

先ほどのパイロットとは、売上と利益の動く方向が逆です。ただし、片方は会社全体、もう片方は文具事業なので、数字を並べて優劣をつけることはできません。

ここからは、私の解釈ですが、興味深いのは「高い商品ほど売れにくい」と単純にはいえない点です。

普段使いの一本を買い替えるか迷うときと、どうしても欲しい限定色を見つけたときでは、財布との相談の仕方も変わるのではないでしょうか。

もちろん、購入理由まで決算資料からわかるわけではありません。

それでも、定番品と限定品で販売状況が違うという説明には、趣味の道具らしさを感じます。

お気に入りの限定品が話題になっていることと、定番モデルまで順調に売れていることは、分けて考える必要がありそうです。

金価格の上昇でなかなか手が出せなくなりつつありますが、日本三大万年筆メーカーの金ペンエントリーモデルの比較記事です。

はじめての金ペンはどれ?日本製 万年筆(エントリーモデル)の比較
はじめての金ペンはどれ?日本製 万年筆(エントリーモデル)の比較

高級品だけではない。プラチナの入門モデルにも注目

ここからは業績を離れて、商品そのものに目を向けます。プラチナ万年筆は業績の公開情報がないためです。ご了承ください。


高価格帯の話が続くと、万年筆を始めるにも大きな出費が必要だと感じるかもしれません。

プラチナ万年筆の公式サイトでは、「プレピー」や「プレジール」といった、手軽に万年筆の書き味を楽しめる製品が紹介されています。

どちらもステンレス製のペン先を採用し、インクの乾燥を抑えるスリップシール機構を備えています。

2026年8月31日には大人向け入門万年筆「プレフォンテ」を900円(+税)で国内発売すると案内していました。

出典:プラチナ万年筆の商品紹介ページ「プレピー」、「プレジール」、「プレフォンテ」


私がここで注目したいのは、憧れの一本を選ぶ楽しさと、まず一本使ってみる楽しさの両方があることです。

「金ペンの書き味を楽しみたい」という人もいれば、「好きな色のインクで日記を書いてみたい」という人もいるでしょう。

高級な万年筆に詳しくなるほど、最初に使ってみるための選択肢を見落としがちなのかもしれません。

ただ、入門モデルがあることは、新しいユーザーが増えている証拠ではありません。今回の情報からプラチナの業績も判断できません。

ここでは、万年筆の世界を考えるときに、定番の金ペンや高価格帯の限定品だけを見る必要はない、という点に注目しています。

新しい素材のペン先に挑戦するのも新たな道かもしれません。

最近、私が気に入っている「チタン製ペン先」の記事です。

金がなければチタンにすればいい|チタン製ペン先のすすめ
金がなければチタンにすればいい|チタン製ペン先のすすめ

プラチナ万年筆でおすすめはこちら。

プロシオン・プロシオン ラスター|レビュー(プラチナ万年筆|万年筆)
プロシオン・プロシオン ラスター|レビュー(プラチナ万年筆|万年筆)

万年筆を使う人は減っている?

今回読んだ資料だけでは、万年筆を使う人が増えているのか、減っているのかまでは判断できません。

理由は、売上金額、販売本数、利用者数が、それぞれ違うものだからです。例えば、次のような場合を考えるとわかりやすいと思います。

例えば、こんな場合数字を読むときの注意点
同じ人が何本も購入する販売本数が増えても、利用者数が増えたとは限らない
同じ本数を、以前より高い価格で販売する売上金額が増えても、販売本数は変わらない場合がある
手持ちの万年筆を長く使い続ける新品を買わない年でも、その人は万年筆の利用者であり続ける
中古品や譲り受けた万年筆を使い始める利用者が増えても、メーカーの新品販売には直接表れない

万年筆好きなら、一本を長く使うことも、同じシリーズを何本か集めることも、想像しやすいのではないでしょうか。

利用者数の変化を確かめるには、同じ条件で繰り返し実施された利用実態調査など、人数を直接捉える資料が必要です。

メーカーの決算資料からわかるのは、主に売れ行きや事業の状況。その違いを意識すると、数字を読み違えにくくなります。

価格だけでは見えない万年筆メーカーの事情

今回、公開情報を読んで印象に残ったのは「高くなった」、「売れている」、「利益が出ている」が、必ずしも一緒に動くわけではないということでした。

売上と利益を分けて見ること。定番品と限定品を分けて見ること。

そして、高価格帯の製品だけでなく、気軽に使い始められる製品にも目を向けること。

そうすると、万年筆の世界が少し違って見えてきます。

もちろん、メーカーの事情がわかったからといって、値上げがうれしくなるわけではありません。

買う側としては、やはり手の届く価格であってほしいものです。

それでも、次に新製品や価格改定のお知らせを見たとき、「高くなったな」で終わらず、どんな製品を、どんな使い手に届けようとしているのかも考えてみたいと思います。

決算資料にも、万年筆好きが読んでおもしろい話はあると感じました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
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文房具(特に筆記具)が好きなサラリーマン。万年筆は147本(2026年6月現在:万年筆歴20年)・ボールペンも約100本・シャープペンは約50本、木軸ペン、その他筆記具(フェルトペン、蛍光ペン 等々)も数え切れないほど購入しています。最近は海外のお店から万年筆のペン先を購入し、カスタマイズを楽しんでいます。壊してしまった万年筆が何本もあります。万年筆以外の記事は別ブログ紙とペンのブログはこちらです。
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